酸素不足

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『初恋の日』


あれは、忘れもしない、夏の暑い日だった。

あなたを初めて見たのは、駅のホームでした。
前を向いて凛と立ち、電車を待つあなたに、一瞬で目を奪われました。
地上に舞い降りた天使のように、あなたは美しかった。
私は学校へ行くことも忘れ、あなたを追いかけた。
顔を見たい、もっと近くに行きたい、触れたい。

あなたを追いかけて行った先は、お墓でした。
あなたは墓前に手を合わせ、花を供えた。

「もう、二十年にもなるのね」

あなたは、そう言って微笑んだ。

――私の、大好きな顔だった。

5/7/2024, 1:52:51 PM