“ごめんね。部活が忙しいから、今はそういうの、考えられないかな”
一年前の光景は、思い出そうとすればすぐにでも瞼の裏に浮かんでくる。
ちょっと頬を染めて、髪をいじりながら、目をそらしがちに答える幼馴染の姿。
そういうの、というのは、お察しの通りだ。僕の告白。断られた時は目の前が真っ暗になった。
かなり長期にわたってめそめそした。部活ってなんだよとか、部活が終わったら受験だから結局……とか、色々と考えた。
だから、部活も受験もすべて終わって、もう一度手紙を出した。アレが“体のいいうそ”でも、最後に当たって砕けられるならいいと思ったのだ。
それがさっきから、僕が桜の下で突っ立っている理由だった。……でも、この様子じゃ、当たって砕けることもできないかもしれない。ずいぶん長い間待っているけど、校内の人は減っていくだけだ。
手の中の卒業証書を見つめていると、むなしさが込み上げてくる。そもそも、進学する大学すら違うのに。自分の気持ちにケリをつけるだけなら、彼女を巻き込む必要はなかったんじゃないか。
もしかしたら彼女もそう思ったから、ここに来ないことを決めたんじゃないだろうか。待つ時間なんて、どうしたって後ろ向きなことを考えてしまう。
はらはら降ってくる桜の花びらが、そろそろ肩に積もってくるような頃。僕はようやく、見切りをつけた。
やめよう。一年前の告白で、彼女の真意を見抜けなかった僕が悪かったんだ。フラれるというのは、きっとそういうことだから。
「うん、一段進化できたな。よかった、よかった……」
わざわざ口に出して、虚無の時間に価値をつける。はたから見ても、主観視点でも、だいぶ間抜け。でも、こうでもしないとやってられなかった。
花びらををふるいおとして、かばんを背負って、とぼとぼ歩き出す。
そのとき。後ろから声をかけられた。
同時に僕は、また一段退化してしまったのだった。
目標文字数 800字
実際の文字数 828字
主題「一年前」
副題「青春」
退化してんのはてめーの文学的要素だよエェーッッコラ
6/16/2024, 1:55:08 PM