夜の祝福あれ

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青いチェックのまま

第一章:沈黙の通知

春の終わり、東京の空は曇っていた。
美咲はスマホを握りしめたまま、駅のホームで立ち尽くしていた。画面には、昨日送ったメッセージが表示されている。

「久しぶり。元気にしてる?」

その下にある、灰色の「未読」のチェックマーク。
それは、彼との距離を測る物差しのようだった。

第二章:青いチェックの記憶

彼――悠人とは、大学時代に出会った。
いつも既読はすぐについた。返信も早かった。
「美咲の文章って、なんか落ち着くんだよね」
そう言ってくれたのは、あの冬の夜だった。

でも、卒業と同時に彼は地方に就職し、連絡は次第に減っていった。
最後に会ったのは、去年の夏。
「また連絡するね」
その言葉を信じて、美咲は待ち続けた。

第三章:未読の理由

メッセージを送ってから三日。
既読はつかない。
スマホの通知音が鳴るたびに胸が跳ねる。
でも、それはいつも違う誰かからだった。

「もしかして、事故にでも…」
そんな不安がよぎる。
でも、SNSでは彼が昨日「ラーメンうまかった」と投稿していた。
元気なのだ。
ただ、美咲のメッセージには触れていない。

第四章:返信のない返信

美咲は、もう一度だけ送ることにした。

「読んでくれてなくてもいい。
ただ、元気ならそれでいい。
ありがとう、今まで。」

送信ボタンを押した瞬間、涙が頬を伝った。
そして、スマホを伏せた。

数時間後。
画面を見た美咲は、息を呑んだ。

そこには、青いチェックがついていた。
でも、返信はなかった。

それでも、美咲はスマホをそっとしまった。
それは、彼からの最後の「返信」だったのかもしれない。

お題♯既読がつかないメッセージ

9/21/2025, 5:21:29 AM