安達 リョウ

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友情(折れない強さ)


その薄っぺらさに血反吐を吐くんじゃないかと本気で思ったことがある。

「思い返せば小学生の頃から、エセ友情マウント合戦は始まってたなー」
―――お昼時、皆がお弁当を広げる賑やかな教室で。
女二人、話題はいつしか友人絡みの痛い話に移行していた。
「例えば?」
「よくあるところで言えば、マラソン大会当日に一緒に走る約束をしてたのに裏切って途中からダッシュする、とか。テスト当日に『全然勉強してない』って言いながら後日テスト返しで中々な高得点叩き出してたりとか」
「それ最早、ド定番あるあるじゃん。身近すぎて友情にひびも入らないよ、イマドキ」

だって自分も身に覚えがあるしね。

けんもほろろにあしらわれて、わたしはちょっとムットする。
………マラソンもテストも、鵜呑みにしたわたしが悪いって?
「何よ、とっくに経験済みだからってそんなに荒まないで。わたしは友情の儚さに傷ついてるの、これ以上性格捻くれたくないのよ」
わたしは純真なの、と胸に両手を当ててキラキラ効果を演出させる彼女に、目の前の友人は寒いからやめてと素っ気なく悪態をつく。
「けどほんとに、それくらいじゃ痛い話には程遠いって」
「まだあるよ」
「? なに」

「心底心許してた人間に、付き合って間もない彼氏取られるとか」
………。
「しかも告白のお膳立てまでして、見事成就したのを一緒にお祝いした矢先とか」
………。

「これもド定番に入るのかな」

うーん、と悩むわたしに、彼女は丁寧に箸を置くと、身を乗り出して頭上にその手を差し出した。
―――そのままぽんぽん、と優しく二度ほどはたかれる。

「どんまい」
「………あ、やっぱり稀有だったか」

最近やっと立ち直って愚痴話に昇華できるようになったから、もういいのだけど。
友情とは硝子細工のように脆いとはよく言ったものだとその時は痛感した。
「そんなの両人共引っ叩いてやればよかったんだよ。学校中に曝して触れ回って、いたたまれなくして退学まで追い込むのが正解」
………。本気で怒ってるな。耳が赤い。

「うん、まあもう忘れたよ。どうでもいいの。それより今日さ、スタバ寄ってかない? 新作出たの味見しに行こうよ」
「お、いいねー」

………そんなことがあっても人間不信にならなかったのは、あなたと同じような反応を示してくれる人達が思いの外たくさんいたから。

わたしはスマホを取り出しスタバのメニューを表示すると、彼女と二人で美味しそう!と盛り上がり、心を弾ませた。


END.

7/25/2024, 5:46:54 AM