阿呆鳥

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【誰もがみんな】

 生きているだけで、人というものは学習をするらしい。呼吸の仕方、話し方、歩き方、意思疎通……。他の人が感覚で覚えていくことを、僕は理解していかなくてはならなかった。
 何をするにも考えてしまう。これは普通なのだろうか、これは他の人とは違うのだろうか、これは……。

「大丈夫?」

 息が浅くなっていた所、心配した声が降ってきた。心隠したかった部分を覗かれてしまい、心臓が早くなるのを感じながら走り出した。顔も名前も知らない、これから知り合うこともなかったであろう人なのに、自分の汚い部分を見られて恥ずかしかった。
 走り続けて辿り着いた川沿いを歩き、橋の影に隠れると一息ついた。

「はぁっ、はぁっ、はぁ〜……」

 無数に転がる石の上に座ったため、お尻に鈍い痛みが響く。流れそうになる涙をこらえるように強く目を閉じ、深呼吸してから目を開いた。何度かそれを繰り返せば段々と落ち着いていき、気分を変えようと川を覗き込んだ。
 川の中では、優雅に鯉が泳いでいた。赤や白といった観賞用の鯉ではなく、自然を生きる暗い色の鯉。目を細めて行く先を眺めていたが、ふとイケないことをしている気分になって目を逸らした。

 人に見られるのが嫌だ。なにか間違っていたときに指摘されるのも、指摘されないまま惨めな思いをするのも嫌だから。評価を、値踏みをされているような気がして落ち着かなくなるから。
 なのに今の僕はどうだ。鯉に対して評価し、価値を決めつけた。価値をつけるのは、自分より下のやつを見つけて自分を安心させるためだ。結局、下には下がいると知らなければ誰も頑張れないのだ。
 誰もがみんな、知らぬうちに人や自分を選別し、評価して価値を決め、それを売り込んでいるのだ。それが例え欠点だとしても、見る人によっては最高のスパイスだ。
 さて、なにもできない僕はみんなと同じようになれるのだろうか。

2/10/2026, 2:31:33 PM