ドドド

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        鳥のように。

あぁ羨ましい。

夏休みの間、皆が何をしていたか
してきたか、興味も無いのに
耳に入るこの状況は、貧困世帯の私には
毒にしか思えなかった。

北海道だの沖縄だのハワイだの韓国だの
ありがちな旅行先だけど
私は1つも知らないのだ。

やっぱりこっちは暑いねー
湿気が違うんだよなぁ
とは、クラス1金持ちのいけ好かない男子の弁だ

暑けりゃクーラーつければいいだろうに、
それに除湿機もあるだろ、
私の家には無いけども。

イライラしながら寝た振りをする私は
汗で腕に張り付いた髪を不快に思いながら
ムクリと起き、下敷きで涼を取る。


大体、不公平だ。

お前達自身が何かしたわけじゃないのに
どうしてこうも私の家は金が無いのか、
いや、ご飯は毎日食べられるし、
学校にも通えてるのだから充分恵まれてる方
だというのは分かる、それにしたって‥

平等に不公平だとして

私がこの夏休み、何処にも行けず
バカにならない様に勉強している間

コイツらは観光地なんかで
勉強もせずバカンスを楽しんでるんだ。

それなら、せめて私がテストで1位をとって
将来ガンガン働いて、バカンスにいかなきゃ
おかしいのに、学力も学年上位なんだコイツらは


思うに、私が苦労している分をコイツらが
人生楽しんでるんだ、自分でした苦労が
他人の幸せに、理不尽にも
世の中そういう風に出来ている。

‥気がする。


はぁ、いや
今だけじゃないんだ
社会に出てもきっと同じ気がする。

その時に私は我慢できるのかな‥
いやあれだな。


見るからいけないんだ
見なければマシなんだ。

いや、見るだろうなぁ‥


いっそ鳥みたいに自由に
何処にでもいけたらなぁ。

地上でで何かしていても
気にもならないだろうな。


あーいいな、鳥。

鳥でも飼おうかなぁ
いつか大きくなったら乗せてくれるかも。



‥夕ご飯は、唐揚げが良いなぁ。





クラス1金持ちの男子
「◯◯さん、今日もずっと自分の世界に入ってたなぁ‥」

やたら広い教室で独り言が漏れる。

自分が嫌われてるのは、何となく
彼女の目を見ればわかる。

しかし、それでも自分は、彼女が気になるのだ。


有名私立の生徒というのは、見栄ばかりはり
如何に自分が優れているかマウントを取るものだ

それが事実かどうかより、それが人に自慢できるか
どうかのが大切だ、だからどうしても
何かを貶める事になる。

クラスの殆どがそんな話の中、
彼女だけは、窓の外の鳥を見ていた。


恐らく、鳥が可愛いとか、鳥になりたいとか
思っているのだろう。


よし‥。


話しかけてみるか‥

緊張しながら、しかし優雅な振る舞いは
崩さず、彼女に声を掛ける。


「鳥、好きなの?」


いきなりの事に彼女はピクリと肩を竦ませ
なんとか答えた。


「あっはい、モモが特に」


そう答えた後、
キョトンとした目でこちらを見ている
彼女にバレぬよう、冷静を装ったが
男は何を言われたか理解できていなかった。


「おもしれー女。」


咄嗟に口についた言葉が
昔見たドラマの金持ちイケメンの台詞と
おなじだったことで男は恥ずかしくなり
その場を去った。

あぁ、今すぐ鳥のように
飛び去りたい。



2人の鳥志願者が番になる日は遠くない。









8/21/2024, 2:00:01 PM