明け方に熱が上がってきた。
何度か汗を拭い、彼女がやっとこちらを向く。
「あれ…なんでここに私いる」
「自分で帰ってきましたよ貴方」
そうだっけ…と荒い呼吸の中、朦朧とした目が彷徨う。
「部屋明るくしますか」
いい、と首が動く。上半身を支えて水を与えるが上手に飲めないらしい。声もかすれている。
支えているうちに下半身に湿り気を感じた。
彼女も違和感というか不快感に気づいたらしい。
「く、そ。アイツら…」
忌々しげにこの部屋にいない男達を憎む声を聞いた。
この地域は医療機関は揃っているが自分が知っている世界とはだいぶ勝手が違っていた。特に女性を女性と思わない設備と法。法は抜け道を探すもの。この世界は異常なまでに個人に焦点が置かれていた。
「自分で、やる」
「動けないでしょう」
彼女の下着を変えてやる。やめろと熱い手が握ってくるけどあまりに震えていて気の毒に思った。
「なんで、色んな奴の手垢がついたやつの下着触れるの」
「黙って」
血液とたくさんの体液が付いた布をバスルームで洗ってくると、また呼吸が荒くなっていた。
額に手を差し込むと熱に浮かされた瞳がこちらを見てくる。
「手、冷たくて、気持ちいい」
副反応なんだろう。視線が定まらない。きっと今のこの時間も忘れてしまうだろう。
「なんで、ってことでしたか」
数時間前に彼女を診た治療師は、悲しげに眉を寄せて、何も言わなかった。それが全てだ。
「今の貴方をただ守りたい。それ以外にありますか」
ふふ、と呼吸を漏らして彼女は静かになった。
もちろん腹は煮えくり返っていた。今すぐにでも彼女を屈辱の底に叩き落とした奴らを切り裂いてやりたい。でも――決して許されぬこと。
この世界ではやたらこの世界の個人が保護される法ばかりまかり通っているからだ。
愛があれば何でもできる
5/17/2026, 2:20:38 AM