『鏡』
「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのは誰?」
少女は今日も鏡へ問いつめる
白雪姫のようなお伽話では無いからもちろん鏡は答えない
だが少女は毎日鏡に話しかけていた
家族だって、クラスの誰だって、道行く人達だって己に勝るものはいないと思っていた
自分こそが1番輝いている、最も美しいのだと
だが自体は思わぬ方向に向かった
今日も少女は鏡へ問い詰める
「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのは誰?」
その瞬間、鏡が勢いよく割れた
ガラスの破片が勢いよく飛び散り、そのひとつが少女の目に飛び込んだ
『何が起きたのだろう?』
『目の前が真っ暗で何も見えない』
少女は酷く混乱していた
そして割れた鏡に誰かの姿がうつる
それは、自分が最も美しいと過信していた少女であった
今の姿とはとって違う、誰からも愛されて常に1番上に立っている己だ
そして少女は初めて己の醜さを思い知った
作 有栖川
8/19/2023, 4:48:58 AM