『美しい』
美醜の感覚は人それぞれだ。花咲く瞬間は美しいし、星が流れて光る瞬間も美しい。流れ出る血は美しいし、赤く燃え盛る火も美しい。
一軒の民家から轟々と火の上がるさまが高台からようやく見えてきた。火事は火の手が見えてからでないと気づかれにくい。野次馬が集い始め、遠くから消防車のサイレンも唸りを上げ始めた。もっと近くで見れたらどれほど美しいかと想像するが、遠くで見つめるのも趣があっていい。けれど美しい瞬間はあっという間だ。花はいずれは枯れゆき、星は塵と成り果ててしまう。到着した消防車の放水によって炎の勢いが徐々に削がれていくと途端に興味が薄れていった。今日見た美しいものは心に大事にしまい込もう。いつか飽きが来るその時までは。
1/17/2024, 3:20:09 AM