盗まれた宝の一つでよいので取って帰れ
王からの命令のもと、休むことなく広大な砂盆を歩き続け、影の中を音もなく進み、遂に宝の隠された洞窟までやって来た。
入り口は横向きになって進まなくてはならないくらい狭かったが、進むにつれて洞窟内は道幅が広くなり、どこかから射している淡い灰色の月光で照らされている。薄明の中、私は用心深く動いていた。
今のところ罠や宝を守る怪物の類いは確認できていない。私はここまでの行程での圧倒的な疲労を意志の力で何とか押し留めていたが、顔や肩にはびっしりと玉の汗が浮かんでいるのがわかっていた。
そろそろ最奥だろうと考えていると、洞窟の奥から光が放出されているのを感じた。足を速めて、奥地に向かった。
光源はすぐに確認できた。
白い宝石のついた首飾り、金でできたカップ類、黄金の冠の中にあってもしっかりと見て取れたのだ。その宝玉は月光を受けて見事な光彩を照り返していたが、天空の星のごとく、自ら光を発してもいた。
4/4/2023, 2:10:44 AM