永身未来

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 どー…ん、パラパラ。どー……ん、パラパララ。打ち上げられる夜の花。それは薄く夜を照らし、私たちの心を浄化する。そして、色鮮やかに輝いては、闇に消えてゆく。その鮮やかさと儚さを、人間は綺麗と言った。その【綺麗】の下で幾つもの物語が生まれてきた。友情や恋情、愛情、沢山の感情が渦巻くステキな物語。それは、魅力的な花。だが、私はその空に咲く輝く花には、これっぽっちも綺麗とは思えなかった。川がサラサラと流れ、開けた河川敷。堤防の上で、舗装されていない土の地面の上に、レジャーシートを敷いて座る。チラチラ生えた雑草は暗くくすんでいて、鬱陶しい。レジャーシートはその河川敷に無数にあって、人も沢山いた。その中で私は、隣に座る彼女を見ていた。空に浮かぶ花___すなわち花火に夢中になり、目をキラキラと見開いている。いつもは見えないうなじに汗が伝って色っぽい。ピンクに染まる頬、結い上げられた髪、赤色の浴衣。全てが"彼"を印象付け、儚い雰囲気が漂う。私は、花火が終わるまで彼の横顔を見つめていた。正確には、目が離せなかった。あまりにも【綺麗】だったから。
 花火が終わり、辺りは自然の音に包まれていた。川はサラサラと流れ、虫の声が戻ってくる。木々の葉と葉が擦れる音、風が辺りを吹き抜け、なびく草の音。そんな自然の中に、私と彼はポツンと座り込んでいた。河川敷には、もう人一人もいない。花火が終わった途端に、他の人間はさっさと退散してしまった。だから、今、ここには私と彼の二人しかいない。彼は相変わらず空を見上げ、私は彼の肩にもたれかかる。すると、彼は私の方を見て、言った。
「なんだよ。」
少し面倒そうな顔をして、こちらをジトリと見つめてくる。そんな彼が愛おしくて、私はフッと微笑んだ。少し湿気の含んだ心地よい風が、私の髪をフワフワと揺らす。
『いやぁ…ね?なんだか、幸せだなぁって。』
私はその胸から溢れ出てくる温かい何かを噛み締めながら言った。そうすると、彼は目を少し見開き、瞬きを二、三回した。その後、彼は優しい笑みを浮かべ、私の頭を撫でてくれた。温かくて、優しい手。その手は、先の私の発言に共感しているような、幸せが滲み出ていた。私は、暫くそのまま、川に映る月を見ていた。胸に集まる幸せを感じながら。
 数分間、そんな時間が続いた。会話はなく、だが二人は満足そうな表情を浮かべていた。そんな中、静寂を破ったのは彼だった。
「今夜は月が綺麗だなァ。」
彼は月を見上げ、ウットリとしていた。見てみると、今夜は大きな満月だった。眩い光が夜を包む。
『私と見てるからだよ。』
私は彼の膝の上に頭をおき、目をつむる。彼は気にすることなく、月を見上げていた。
『馬ァ鹿。手前ェがいなくても月は綺麗だよ。』
そう言ってケラケラ笑う彼。私は片目を開け、彼を見上げた。下から見る彼と、真っ暗な空。自然と、彼の方に目がいく。すると彼は私を見下ろして、ニカっと笑った。
『まぁでも?手前ェがいた方が幾分か綺麗だなぁ。』
そんな照れ隠しな彼の発言に心を打たれる。私はもう片方の目も開け、両目で彼を見た。そして彼の頬に手を添え、微笑んだ。
「素直じゃないねぇ。」
私は起き上がり、彼と向かい合わせに座って、そのまま接吻をした。そして、おでこをくっつけ、お互いの手を握って、密かに永遠を誓う。
彼と見上げた月は、花火の後の静寂を守り続け、私と彼の愛を見守り続ける。

9/14/2025, 1:04:29 PM