山百合

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・7『1年前』

キルケーは代わり映えしない海で日々を巡っていた
気まぐれに海を荒らしたりしても哀れな人間達が今際の際に見るのはセイレーンではないし、
まして私に気が付くこともない。船を転覆させても退屈なだけだった

人間を1人、私の為のお人形に出来ないだろうか
私の為だけの人間の男を。

1年前そうして陸上にキルケーお手製の薬を撒いた
薬を撒いた一帯の木々はとても良く育ってくれた
グラウが木こりから海の神の一員になった要因だった
キルケーの薬で育った植物を食べてしまったグラウは喉の渇きが治まらず陸から海へ。

そしてキルケーの元へ

ただグラウはキルケーに恋をしなかった

【続く】


6/16/2024, 1:54:27 PM