小絲さなこ

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「本能が、それは訊くなと言っている」


大学入学を機に上京し数年。
東京はあらゆるものが高い。
俺は社会人になってからも大学入学時から住んでいるアパートに住み続けていた。

ある日曜日。
長らく空室だった隣に誰か引っ越してきた。

都会では引越しの挨拶はあまりしない。
だから、インターフォンが鳴るなんて思わなかった。


「すみません、私、隣に引っ越してきた者なのですが……」

若い女性と思われる声。
おいおい、防犯意識低くねーか?
ちょっと気をつけるように言っておいた方がいいか……?

親切心半分、どんな子なのか見てみたい好奇心半分でドアを開けた。
そこに立っていたのは、なんと、疎遠になっていた幼馴染。

「え……なんで……」
「……いや、なんでって、それこっちのセリフ」


この再会が、すべての始まり。
まるで止まっていた時計が動き出したような感じだ。


田舎の感覚が抜けきらない彼女に防犯面でアドバイスしたり、夜コンビニ行く時に付き添ったり、そのお礼にと食事を作ってくれたり────
そのうち、俺の部屋に彼女がいる時間が長くなり、じゃあいっそ一緒に住むか、ということになった。
人生何があるかわからない。

ところで、彼女が隣に引っ越してきたのは本当に偶然なのだろうか。




────突然の君の訪問。

8/28/2024, 3:17:23 PM