泡沫

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煙草にゆっくり火をつける。
煙草の先端に付いた火を消しながら、さっきまでの騒動を振り返る。

私は小さな会社の社長を務めている。社長とは言いつつもその名前は肩書きだけで、最近は人員不足のため私も通常の従業員と変わらず同じ仕事をこなしている。
先程は事務所で内勤していたとき、突然スプリンクラーが作動し、大惨事に至った。とにかく長年集めた重要資料は濡れたりせず、どうにかなったものの、廊下やトイレなどが水で浸水してしまい、そのハプニングの対応に追われていた。今日の午後はゆっくりできるといいのだが……

しかしゆっくりしていられるのも、束の間だった。
聞きなれた叫び声がする。これは私の社員の声だろう。

「社長大変です!」
その数秒後、秘書が報告するため屋上に飛び込んできた。
「うちのオフィスがまた大変なことに!」と叫んだ。
秘書はおろおろしている様子だった。
とりあえず状況を見てみないと対処の仕様がない。私は煙草を急いで揉み消し、オフィスへと戻った。

『束の間の休息』

10/8/2023, 12:57:14 PM