「流れ星に願いを」とキャストが言った。
よくわからんテーマパークに連れて来られて、よくわからんアトラクションもどきに導かれたことで流れ星に願いを言う羽目になった次第だ。
僕は死ぬほど空気が読めない。
僕自身が読めていると思っていた空気は全く別の次元のもので、「こういうときってさ、“普通は”、“大体は”、こうだよね、こうするよね」と思われている暗黙の了解に類するものとは程遠い的外れな物言いや行動をとってしまっているらしい。要するに場面に相応しい所作が著しくできない怪物なのだ。
最初は僕の奇行を天然と言い笑っていた友人も、いつしか鬱憤だけを孕むようになっていってき、よくわからん説き伏せ方で僕を懐柔し、矯正しようと試みるようになった。
「お前のために言ってんだよ、俺しか言うヤツ居ないぞ、俺が言わなくなったらお前は終わりだよ」という具合の叱責をされるゲロみたいな日々が重なっていくごとに、僕は空気が読めなくてもイエスマンになることはできるよなってことに気づいた。
「はい」しか言わないマシーンと化した僕は感情たるものが希薄なっていったけど、無理して空気を読まなくていい日々は格別に生きやすくなった。代償としては十分妥当だと思う。けど、並行に「はい」以外のことを口にすると眉を顰められ、忌み嫌われるという地獄を生み出してしまった。
「——流れ星に願いを」
もう一度、キャストが言った。
催促されているようだったというか実際そうだったんだと思う。こんなテーマパークですら空気を読まないといけないなんて世の中ってマジで窮屈だなって思うのと同時に、ああやっぱ僕は空気が読めないなって再自覚した。
そう、僕は空気が読めない。けど、イエスマンで居るのも辟易としてきたし、流れ星に誓ってこれからは正直に生きようかなって思う。
「みんなが僕よりも不幸になりますよに」
きん、と張り詰めた沈黙に鼓膜が避けそうになる。おかしいね、沈黙なのに鼓膜が張り裂けそうになるなんて。
キャストの呆然とした表情と、僕を囲うようにして並ぶ知らない人たちの「あいつヤバ」っていう視線と、友人の「信じられんねー、なんなんお前」っていう表情に、僕は違和感を覚えた。
どうして僕だけがおかしいみたいな世界に、僕は存在しているんだろう。
みんなが、ひどく苦しみますように。████ように。
それが願いです。
僕だけが生きづらいのなら、みんながどこか違う場所に行けばいい。僕以外のみんなが僕の居ないところに行けばいい。だって僕だけがどこかに行くのはおかしいよ、変だよ、納得できないよ。
世界の偉い誰かさん、平等を再三繰り返す誰かさん、平等なら僕のどうしようもないお願いだって他のみんなの願いと同じように、流れ星は叶えてくれるはずだよね?
4/25/2026, 2:33:38 PM