『我慢』
月曜日の夜は鬱々とする。ああまだ4日も働かないといけないらしい。なんて酷い生活なんだろうか。
何をするでもなく動画サイトに時間を溶かす日々だ。
その日も別に特別なことは無かった。何となく流れてきた動画を、何となくで再生する。
今日は日本語字幕付きの海外の料理番組が流れてきた。昨日、料理系の動画を大量に流し見していた結果だろうか。
日本人の体型とは比べて大分ふくよかな料理人が、遠慮なく肉を焼いていく。カロリーが命らしい。
「深夜に見るもんじゃねぇかも」
スマホで時間を見ると0:23の文字が見える。残念ながらとっくのとうに夕飯は食べ終えているし、そう出なくても夜食には遅い時間。歯磨きだって終えてしまった。
料理が完成した後に、料理人の言葉が字幕で表示された。
『実は医者からはカロリーを控えろー、痩せろーなんて言われてるんですけどね。人生短いのに我慢なんてしてられないじゃないですか!』
豪快に笑いながら肉を切り、口に含み飲み込む。そこに追い打ちをかけるかのように炭酸ジュースで口内の油を全て胃へ流し込んでいた。きっとこの人の担当医が見ていたら卒倒するだろう。
ただ、本当にしょうもないが自分の頭の中で『我慢なんてしてられない』という言葉が残り続けた。料理番組の、それも医者の判断を総無視するような言葉から得た教訓なんてロクなもんじゃないだろうに。
「……た、食べてもいいよな。うん。これよりマシだもんな」
ロクでもないと理解はしつつ、どうしてか既に立ち上がり
左手にはカップ麺を持ってしまっていた。
免罪符になりもしない、新しくできた教訓で深夜の罪から目を逸らした。
(テーマ:たとえ間違いだったとしても)
4/22/2024, 10:31:20 AM