かっぱえびせん

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「手を繋いで」

私たちはいつも、
何も言わずに手を繋いで歩いていた。
言葉なんてなくても、
その温もりがすべてを教えてくれる気がして。

でも、本当は怖かった。
君の手が、私じゃない誰かのものになったら、
このぬくもりを忘れられる自信がなかったから。

「手、冷たいね」って君は笑って、
私の手をそっと包んでくれる。
その優しさが嬉しくて、切なくて、
何度も心の中で叫んでいた。

「このまま時間が止まればいい」って。

でも、現実は冷たくて、
君の手が私の指先から離れた瞬間、
何か大事なものが音もなく壊れた気がした。

それでも私は笑って、
「またね」なんて言うんだ。
君に届かない声で。

12/10/2024, 3:29:29 AM