夜明け前
陽が顔を覗かせるまでが
一番暗いことなど、とうに知っている
私もあなたも、痛いほど理解している
暗い部屋で目が覚める。
慣れ親しんだ部屋は恐ろしいほど静かで、途端に私は孤独に襲われた。
じわじわと焦りが広がり、非力さを痛感した在りし日のワンシーンが、着実に脳内へ侵入してくる。
意思とは無関係な記憶の再現に、インターホンもノックもありはしない。
動悸だけが私の生きる証拠となって、早くこの波が過ぎ去れと願う。
耳を澄まして安心を探す。
あなたが微かな寝息を立てていることに気づく。
不覚にも安心を得る。この心のヒビに染み入るような感覚は、未だ言葉にならないまま、内心でゆらゆらと揺れている。
名前の付かない関係のまま、私は眠るあなたと手を繋いだ。
2人暮らしでもなく、転がり込んできたのはあなただけれど、こうして柄にもなく縋ってしまうのは、あなたが誠実だとわかっているから。
「なに」
いつの間にか目を覚ましたあなたが伏目がちに言う。握り返された手が暖まっていく。
「なんか怖かった」
「そっか」
嘘をつかなくてよかった。
なんでもないなんて、思ってもいないことを口にしなくてよかった。
誠実で優しいあなたは、そっと私を包んで二度寝に連れて行った。
次に目を覚ますのは、陽の光のもとだという確信が、再び睡魔を呼び戻した。
暖かい安心に乗って、あの恐ろしい情景が消えた。
9/13/2024, 4:23:45 PM