Largo giocoso

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『風邪』


暗い部屋の中咳き込む人が1人。

父親は単身赴任。母親は直ぐにこちらには来れなく、兄妹たちは自分のことでいっぱいだ。

“苦しい”

彼は誰にも看病して貰えず、ただただ咳をする。

何とか熱を冷まし、咳止めを飲みフラフラになりながら買いに行った食料たちも、もう時期底を突く。

体の中に入ったウイルスと免疫が戦っている。

彼は、たとえ薬などを飲んで対抗したとしても、ただそれらを傍観することしかできない。

彼は朦朧としながら少しシミが入った天井を見る。

視界がぼやけ、ハッキリと見ることが出来なかったが、そこには亡き祖母の姿があるような気がした。

彼はその人を見た途端急な眠気に襲われた。



そして、次に目が覚めた時は病院の中だった。



どうやら、いつも届けてくれる配達員の人が彼のポストの中に少し前に入れてたのがそのままになっていて、何か嫌な予感がし、大家に電話をかけたそうだ。

大家は彼のことが心配になり様子を見に行くと、ものすごい高熱でうなされている彼の姿があり、救急搬送、即入院となったようだ。


彼はその人たちに感謝した。
そして、同時に自分が生きていることを実感した。


祖母の墓に手を合わせてる時、ふと思い出した出来事だった。

何となく、祖母は微笑んでいる気がした。


12/16/2022, 1:21:18 PM