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お気に入りの曲 Fly me to the moon の心地よいリズムにひたっていると、ストンと隣に腰をおろされた。

このまま、どこかに行くか?この曲、そういう意味だろう?リズムが良いから聴いているなら他にもあるよな。

急に何を言い出すのだろうかと、ゆっくりと顔を向ける。少し強張った様子に何かあったのかと自分の中のデータを高速演算する。逃げ出す事をするタイプじゃない。こちらに顔が向き見つめ合う。

昔は月へ行くなんて夢だった。それになぞらえたラブソングだ。確かに手を取って、抱きしめて 好き って言っているって事だとは思うけど、どこへ行くつもりだろう。なぜ、今? 優しい指先が頬に触れ髪をすくわれる。返事は?と問われる。落ち着かなくては事情を聞かなきゃ…おかしな事考えていたら止めなきゃ…。

あっ。また妄想しているな。ドライブでもと思っていたが、別世界に行かされそうだな。

苦笑する姿は苦しんでいるのかもしれない。
別世界に行きたいの?
間抜け!何をストレートに聞いているの!バカバカ!

笑い出された。腹を抱えて、 腹が痛いとまで。
ひとしきりそれが続くので、心配になる。

フゥ。笑ったらスッキリしたな。出かけようか?
お前の別世界から逃れられないな。
ありがとう。悩むのがバカらしくなって来た。
行きたがっていたアンドロメダ銀河観光に行こうか。

あなたの方が別世界じゃない。心地よい…。
逃れられない…頭の中のあなたから。




5/23/2024, 10:34:51 PM