ストック

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「貴女のことは蝶よ花よと育てたんだから」
私の母はことあるごとにそう言う。
今でこそ苦笑いして流せるけれど、子どもの頃の私がどんなことを考えていたか、母は知らなかっただろう。


食事はいつも決まった時間に家族揃って食べる。
だから、私は遅くまで外に遊ぶことはできなかった。

身体に悪いからって買い食いは禁止。
身体に良いおやつは貰っていたけど、私はカラフルな駄菓子が輝いて見えた。


高校生になって通学時間が大幅に延びた。
遅くまで部活に励んで、帰りは皆でコンビニでアイスや肉まんなんて買ったっけ。
初めて買い食いしたソフトクリームの味は、大人になってもまだ覚えている。
部活がない日も「今日は臨時で部活だから」と嘘をついて、放課後飽きることなく友達と話をしていた。ドラマやマンガにゲーム、時には恋愛話で盛り上がるのは、今までに読んだどんな感動的な本よりも貴重な時間に思えた。


母にとっては「蝶よ花よ」と育てることが愛情だったのかもしれない。
育ててくれたことはありがたい。
でも「蝶よ花よ」以外に「イルカのように波に乗って」という生き方もあるって認めてほしかったな。

8/8/2023, 11:01:23 AM