27(ツナ)

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砂時計の音

子供の頃、祖父の家にあった砂時計が私のお気に入りだった。
暇があれば砂時計をひっくり返し、「サラサラ」と耳触りのよい音と滑らかに流れ落ちる砂を眺めては癒されていた。

大人になると時間に追われて砂時計を見ている余裕なんてなくなってしまった。
そんなある日、久しぶりに予定のない休日、あてもなく街を散策していると、少し奥まった路地の裏に平仮名で『あんてぃく』と書いてある雑貨屋を目にした。
不思議と私の足は無意識にその店へ向かっていた。
古めかしい重厚な扉を開けると、どこか懐かしく、沢山の品物が雑多に置かれたごく普通の雑貨屋だった。
「いらっしゃい。…うーん、欲しいのはこれかな?」と声をかけてきたのは、エプロン姿の店主と思しき老紳士。
私を見てそう言いうと、そこら辺の棚からヒョイと砂時計を取り出した。
「時間に追われているんだろう?たまには砂時計の音を聞く時間の余裕を持つとよいよ。」
それから私はこの店の常連になった。

10/17/2025, 11:24:06 AM