いしか

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向かい合わせの席に座った、同級生だった女の子。
何年か振りの中学の同窓会が開かれた今日。その同級生の女の子、「町田彩奈」に俺は目を奪われた。彼女は決して目立つ存在ではなかった。けれど、運動も勉強も出来て、俺は密かに憧れていた。

「ひ、久しぶり。町田。俺の事、覚えてるかな?」
少し不安に思いながら、俺は彼女に話しかけた。
「うん。もちろん覚えてるよ。久しぶり、武元君。」
彼女は大人の女性に声も、姿も、変わっていた。俺達は今年で25歳になる。変わるなんて当たり前の事だ。

「武下君って、今警察官なんでしょ?凄いね。」
「あはは、いや、そんな事ないよ。周りの先輩や同期に比べたら、俺なんて駄目な方で……、」
「そんなことないよ。周りはそんな事少しも思ってないと思うな……。」
「そ、そうかな………、」

町田はこういう女の子だつた。目立たない子ではあったけれど友達には慕われていたし、先生にも頼られていた。
そんな、生徒だった。

中学生の頃のあどけなさは今はもうない。
お化粧をして、髪も整え、見違える程綺麗になった。そのままでもかわいい。
そう言ってしまいたくなるが、それはきっと失礼な事で、彼女がそれを自分で許さなかったのだろうと思うし、こうして戦っているのだろうなと勝手に思った。

「あ、あのさ、町田、変な意味とか、気持ち悪いとか、そういう事を思わないで、素直に受け止めてほしいんだけど………、」
「えっ?何?なんか、怖いよ(笑)」

こんなこというなんて、きっと変で、おかしい。けれど、今伝えないと、もうだめな気がする。もちろん、告白ではない。

「あのさ、町田、中学の時のあどけなかった時も、かわいいなって思ってたけど、あ!もし彼氏がいたらごめん!ほんとっ!聞き流してくれていいんだけど、…、」

「彼氏はいないから大丈夫だよ。それに、聞き流したりなんかしないよっ。」

そう、改めて言われしまったら、何だが心臓がドキドキしてる。いや、おかしい人だろ俺っ!

「なあに?」
「……っ、だから、昔の町田も可愛かったけど、今大人になった町田も可愛くて、とっても綺麗だなって思った!それだけ!」

「し、失礼だったらごめんっ!」

アタフタしている俺を尻目に、町田の顔が少し涙目にしながら、優しく笑っていた顔の事に俺は気づかなかった。

けれど、この時確かに、何かが始まる音がした。確かに、音がした。

8/25/2023, 11:26:42 AM