しぎい

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「元気?」

そう言って入院先の病院に数年ぶりに顔を出したのは、高校時代の私の数少ない女友達だった。

入院してるんだよ元気なわけねーだろ、と言えたらどんなによかったか。
私はこみ上げてくる汚い言葉を必死に抑え込んで、笑顔で「元気だよ」と返した。来てくれて嬉しい、と心にもないことまで。

(かわいい顔、昔から変わらないんだ。見るだけで引っかき回したくなる)

でも私にさらに本格的なダメージを食らわしたのは、その後ろからついてきた男の存在だった。
初恋だったのだ。叶いっこないってわかっていたけど。

笑う男は、やがて女と共に病室に入ってきた。

「大丈夫? 入院したって聞いて。でもってなんの病気なん?」
「え、多分貧血」

とっさにごまかした私に、「うっそー、貧血でこんなチューブとかつける?」と周囲の医療器具を無造作に触るお人形女。ばれないように睨みつける。

(こいつらが出てってくれるまで耐えてくれるかな、私の心臓)

4/10/2025, 9:53:59 AM