夏は思いました。「みんなとお友達になりたいのになあ」
この世界には春と夏と秋と冬、四つの季節しかありません。春と秋には初めと終わりに会えるけれど、冬には一度も会ったことがありませんでした。
なぜなら、夏と冬は正反対の季節だからです。決して交わることはない。交わってはいけない。それは神様から言い渡された、絶対のルールでした。
「でも、友達になりたいんだよなあ」
たった四つしかない季節なのに、最後の一つとは永遠に会えない。そんなのは、夏にとっては悲しすぎました。
「どうしたら友達になれるかなぁ」
*
夏は、秋に相談することにしました。秋は夏と冬に挟まれている季節なので、適任だと思ったのです。
「ねえ秋。僕、冬に会いたいんだ。橋渡しをしてくれない?」
けれど、秋は「だめだ」と言いました。季節を狂わせることは許されない。それが神様から言い渡されたルールだからです。
夏も、それは知っていました。けれど、どうしても諦められなかったのです。
季節が巡る度、夏は何度も秋に交渉しました。そして、そのたびに断られました。
それでも、根気よく何度も何度も訴え続けて。
ある時から、秋が病気がちになってしまいました。あまり長く季節を担うことが出来ないのです。
その代わりに、夏と冬が長めに頑張ることで何とかしていました。
初めは夏も真面目に頑張っていましたが、少しして欲が出るようになってしまいました。
「ねえ秋、ちょっとでいいんだ。どうにか冬に会えないかな?」
いつもならすぐに断る秋ですが、この日は違いました。体が弱っていたせいでしょうか。秋は「少しだけなら」と弱弱しく口にしたのです。
それから、夏は時々秋の担当する季節に、冬に会いに行くようになったのでした。
*
夏に悪気はありませんでした。ほんとうにただ、冬に会いたかっただけなのです。会って、友達になりたかっただけなのです。
けれど、少しずつ、少しずつ、季節が狂っていきます。
一度禁を破ってしまったしわ寄せは、どうなってしまうのか。
それは、誰にも分からないのです。
∕『友達』
10/26/2024, 9:08:25 AM