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誰もがみんな幸せを夢見る。けれど本当の意味で幸せな人生を暮らせる人は多くはない。それなりの幸せと不満を抱えて生きるものがほとんど。

幸せになる道は主に3つ。どれも贅沢で,簡単には出来もしない。故に幸せをその手に入れることが出来るのかもしれない。


1つ目は願いを全て叶えること。もしくは夢を諦めることなく持ち続け ただ上を目指すこと。

2つ目は願いなど初めから捨て去ってしまい期待しないこと。何もかも諦念で覆い隠して,目をつぶり耳を塞ぐこと。

3つ目は与えられたものに感謝し,足るを知ること。羨まず妬まず,自信の持つものだけに視線を向けること。


世の中で幸せだと嘘偽りなく語る人は,基本的に他人を気にしない。そう,彼みたいに。矛盾し合う3つを併せ持ったような彼は間違いなく日々を楽しんでいた。


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「生きる意味? 僕にとっては幸せになること」

抽象的で普通なら返答に困るような質問に,逡巡することも無くあっけらかんと言い放つ。そこには一切のごまかしも建前も何も無く,ただ単純な本音なのだとそう思える。


「楽しい 嬉しい 面白い。そんなふうに思えるようにする為だけに行動してる」

簡潔で単純明快な回答。迷いはなく視線は真っ直ぐで 瞳にはキラキラと輝く光。毎日が冒険で成長で宝物 とでも言いそうな雰囲気。


「なんでそんなに前向きなの」
「そう?そんなつもりもないけど。 ……あえて言うなら,現実は変わらないけど見える世界は変えられるからかなぁ。そっちの方が幸せ」

諦めながら前を向いて,現状を受け入れ満足する。それはどこまでも期待を捨て去った彼だからこそできること。


「そうかもしれないけど,簡単じゃないよ」
「簡単だよ。全部自分に責を問えばいいだけ」

傲慢なほどに凛と立つ 揺るぎないその姿は,痛いほど美しい。きっと君は痛みすら愛するのだろうけれど。そうでなければ崩れてしまうから迷わない。


「君は繊細だね」
「……不思議な言葉選びだね」

くすり と小さく笑う彼はどこか寂しそうな色をしていた。小さな違和感を無視して走り出す直前のような。後先考えない行動力。


きっと君は本当に幸せだ。少なくとも君自身そう思っている。信じている。

それでも,もっと我儘で強欲でもいのにと思えてしまう。諦めを知るには早すぎる。


「怖いよ。終わりを恐れない在り方は」
「わからないならないのと一緒。それに,案外それも楽しめるかもよ」

未来を見すえた刹那的な生き方。心配とか恐怖とは無縁な考え方。彼の”幸せ”の捉え方は酷く危うく思えた。


「……君は幸せなの」
「もちろん」

その言葉の先は聞こえることは無い。ただ微笑む君の笑顔は無垢で凜然であった。


テーマ : «誰もがみんな» 25

2/10/2023, 3:32:19 PM