千明@低浮上

Open App

「世間は冬休みなんだね」

街中ですれ違う子供たちを見ながら彼女が言った。

「私冬休みとか、夏休みとか、そう言うの好きじゃなかったな」
「どうして」
「だって、好きな人に会えないじゃない」

彼女とは3年間、同じ高校に通っていたが長期休みが嫌いだなんて初めて知った。それから思い人がいた事も、初耳だ。
動揺を隠すようにして彼女から視線をずらせば向こうから手を繋いで歩いてくる高校生のカップルがいた。
すれ違う時にぶつからない様彼女の肩を抱いて少し横に避けると、高校生のカップルの方では、男の子が繋ぐ女の子の手を引っ張って自らの方へ引き寄せていた。すれちがいざまにペコリと下げられた頭にいい彼氏持ったな、と女の子に念を送る。
やはり年齢関係なく、男は好きな女を守るものなんだなとぼーっと考えていると抱き寄せていた彼女から小さく声が漏れた。

「ね、ねぇっ、いつまでコレ...」
「あ、ああ。悪い」

パッと彼女の肩から手を離すと下を向いた彼女の、顔か赤く染まっていた。

「俺は冬休みとか好きだったけどね」
「なんで?」
「会えない間に愛が募るから、かな」

ようやく顔を持ち上げた彼女の目がまんまるに開かれていた。

「好きな人、いたんだ...」

悲しげに伏せられた瞼に、彼女の思い人が自分であると確信してしまった。
そうと分かれば話は早い。

「あのねぇ、高校卒業してから短大、就職先、ずっと一緒なのになーんでわかんないかなぁ」
「え?」
「好きだからに決まってるでしょ。俺はお前が好きなの」
「...え?」
「お前が幸せになれるなら相手は俺じゃなくてもいいと思ってたけど、やーめた」

彼女の方を見下ろせば彼女は耳だけでなく、首まで真っ赤に染め上げていた。

「やっと俺のものにできた。もう離さないよ」



#冬休み

12/28/2022, 9:45:43 PM