遠い足音
いつも聞こえてくる足音。ゆっくりしっかりと階段を一段ずつ登ってくる。部屋の前まで来たところでそれは止み、ドアを叩く音へと変わっていく。そして、無理矢理ドアをこじ開け、再び近づいてくる足音は、僕の横で止まり、頭まで被っていた布団を剥ぎ取り、高く拳を上げ、真っ直ぐに僕へと振り下ろす。
なぜあの時、やり返さなかったのか。それはやり返してしまったら自分の人生を棒に振ってしまうとわかっていたから。ただひたすら痛みに耐え、この人は弱いんだと自分に言い聞かせ、時が過ぎるのを待っていた。
僕は親になった経験がない。だからよくはわからないけど、少なくても、親の都合で子どもに手を挙げていい理由はないと、30年経った今でも思うのだ。
10/2/2025, 1:03:17 PM