薄墨

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今日も平和な一日だった。
怪物もいない。
ビルも壊れない。
人が目の前で殺されることもない。

仕事をする人たちが街を我が物顔で駆け回り、自動車が排気ガスを吐き出す。
子供が笑い、大人が微笑む。
空は青い。

平和な、平和な冬の日だ。
危ないことも怖いことも何もない。
ただの日常。ただの毎日。
私たちが掴み取った、かけがえのない平和。

でもそこに君はいない。

戦いの果てにあの必殺技を使って、元凶もろとも吹き飛んだ君は。

私が守りたいのは、世界より、なにより、君だった。
君だったのに。

平和な世界。
幸せな世界。
私たちが守った世界は、穏やかに回り続ける。
私と君を除け者にして。

平和のぬるま湯で、大勢の人たちが、楽しそうに、幸せそうに過ごす。
私はそれに入れない。
もう、一緒に居たい人がいないから。
君がいないから。

私にできるのは、寂しさを感じながら、幸せで平和な、私たちの勝利の証を眺めるだけ。
虚しさと寂しさしか残っていない、私たちの勝利を。
私たちを犠牲に成り立ったこの世界を。

人々が楽しそうに道を行き交う。
自動車がうなりを上げて、道路を走り回る。
ビルは高く聳え立ち、空は青い。

今日も世界は平和だ。

12/19/2024, 3:42:46 PM