子供という生き物は、センサーを搭載している。
親という生き物の足音を察知するセンサーだ。
「ぱぱー!!」
扉を開けた途端、がばっと抱きついてくる。彼は父親が避けるだとか、手を滑らせるとか、全く想定せずに全力で抱きしめてくれることを確信しているため、全体重をかけている。
腰に響くが、顔に出さない。笑顔で、優しく、抱きしめて。
「ただいま。相変わらず気づくのが早いな」
ぷにぷにとほっぺを摘むと幸せそうな顔をする。
「パパの足音はね、すたすたなの。ママは、すっすっだよ」
「おー、よく聞き分けてるな。大事にしろよ、その耳」
もちもちのほっぺを揉んでいると、やめてーっと笑いながら訴えてくる。ケラケラと笑う声が愛おしい。
妻曰く息子の足音クイズは百発百中、ただし俺に限る、らしい。ぎゅっと裾を掴む彼の手は自分より遥かに小さくて、それでも絶大な信頼を持って掴んでくる。その気持ちがなんだかこそばゆくて、さらにほっぺを揉み込んでやった。
【足音】
8/19/2025, 8:26:21 AM