作家志望の高校生

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僕は、兄が羨ましくて仕方なかった。
なんでもないような顔をして、やることなすこと全て卒なくそれなりの結果を出して終わらせる。
人との付き合いだって程々で、深入りしすぎず、浅すぎない。
器用に生きられる兄が、羨ましかった。
僕は兄の出涸らしのような、そんな才しか持っていなかったから。
兄と違って、何時間もかけてコツコツ努力して、ようやく兄に並べる。
友人だって、親しい何人かを作るので精一杯だった。
ある日、兄が彼女を家に連れてきた。
可愛い人だった。明るそうで、兄によく似合う。
だが、すぐに振られたらしい。ある日の食卓で、兄がそう笑っていた。
兄のこういう所も、少しだけ羨ましかった。
嫌なことがあっても、すぐに切り替えて笑える。
僕ならもっと引きずって、そんなすぐには立ち直れない。
でも、ある日。兄とおつかいに出かけた夕方、ぽつりと兄に言われた。
「俺、お前のこと羨ましいんだよね。」
意味が分からなくて、少し語気を強くして聞き返した。
兄は困ったように笑って、それから続けた。
「いやさ、お前、どんだけ無理だって言われても、めちゃくちゃに努力して、頑張って、そこそこの結果出すじゃん。俺、そういうできないからさ。」
兄は、努力しなくてもできるだけだと思っていた。
けれど、違ったらしい。兄は、努力の才能が無かったのだと。兄はそう言った。
「あとさ〜、俺、親友ってできないから。なんつーか、広く浅く、って。彼女にもそれで振られたし。」
広く、浅く。確かに、僕はどちらかと言えば狭く深くの人間だった。
友人の数こそ片手で足りる程しかいないが、その全員が、親友と胸を張って言えるほど親しい。
「……ま、薄いんだよ、俺の人生。全部中途半端。……俺が全部どうでもいいと思ってるからなんだろうけど。アイツに振られてもさ、全然どうでもよくて。まぁいっかくらいしか思わなかったんだ。薄情だろ?」
夕日に照らされた兄の顔は、逆光になってよく見えなかった。
隣の芝生は青いのだ。
僕が羨んだ兄の人生は、兄にとって酷く無味乾燥なものらしい。
それなら、兄は僕の人生を羨んでいるのだろうか。
僕は、僕の人生を誇ってもいいのだろうか。憧れの人に羨まれるほどの人生を歩んでいる、と。

テーマ:ないものねだり

3/27/2026, 8:55:59 AM