しろ

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「日陰」

彼女はこう言った。
私は雲になりたいの。
だって、無数に飛んでくる槍や小さな針か刺さって私の心はボロボロだから。
雲になったら、槍であろうが通り抜けるでしょ?

雨を降らすことだってできるし、日照り続きの場所には日陰を作ることができる。

だから雲になりたいの、と。

中からは消して開けることのできない個室の中で、考えだした彼女なりの結論だった。

実際のところ、彼女は雲になってしまったのかもしれない。
なぜなら、そうしないと、彼女は立っていられなかったから。

どんなことを言われようと、耐えて耐えて耐え抜くにはそれしか手段がなかったのである。

数年後、彼女は雲ではなく風になりたいと思うようになった。

不要なものは吹き飛ばし、
春の訪れを知らせる
「春一番」の風になりたいと思うようになった。

やがて彼女は悟るようになる。
小さな針も、槍も本当は飛んでなどいなかったからだ。

言葉の読み違い、聞き違い。
これは彼女の先天的な障害であるのだろう。
数時間経って読み返せば、
送られた言葉には何の針も槍もこっちには向けられてなく、ただ単に説明されていただけだったのだ。

彼女はこの先天的な問題を治したくて、治療に今、取り組んでいる。

1/29/2025, 12:02:54 PM