いぐあな

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300字小説

異国の舞姫

 遠征から帰ってきた父王が南の王国から奪ってきたという耳飾りを付けて凱旋の宴に出る。
 注がれる祝杯を干し、花嫁候補の姫君達とのダンスも終え、私は酔いをさます為に庭園に出た。
「殿下、私とも踊って頂けますか?」
 ふと、気がつくと異国風の薄衣を重ねたドレスを来た姫君が私の手を取った。

 姫君の口から甘い異国の歌が流れる。私と相向かい、見慣れぬ踊りで妖しく腰を振りながら、姫君が近づく。嗅ぎなれぬ香水の匂いが鼻に届く。
「……殿下」
 頬に触れた柔らかな感触に飛び退くと姫君の手には耳飾りが。
「我が君の大切なものを返して頂きました」
 嫣然とした笑みを浮かべ、姫君がふわりと塀に飛び乗る。
「では。縁があったらまた会いましょう」

お題「また会いましょう」

11/13/2023, 11:35:18 AM