「あっついね〜」
手をパタパタと団扇代わりに振りながら、キミはうんざりしたように言う。
「そうだね。でも、これが現実なんだよ」
さっきまでは、涼しいオフィスで仕事をしていたから暑さは忘れていたけれど、今は夏。これが現実なわけで。
「夕方になってもこんなに暑いなんて。何か冷たい物でも…」
と並んで歩いていたキミが、ピタリと足を止めた。
「ん?どうかした?」
こんなところで立ち止まらないで、さっさと家に帰って涼みたい。そう思ったけれど、キミは貼られたポスターを見ているようで、動こうとしない。
「暑いし早く帰ろうよ」
抗議するようにキミの腕を叩くと
「ねえ、これ食べたい」
振り向いたキミはポスターを指差しにっこり笑う。
「え?何を?」
何のことかわからず、キミがいて見えなかったポスターを覗くと
「入道雲かき氷。あります」
そのポスターは、近くの喫茶店のもので、丼くらいの大きさの器に入った、かき氷が写っていた。
「二人で食べると、ちょうど良さそうな大きさじゃない?」
余程食べたいのか、目をキラキラさせ、キミは俺を誘ってくる。
「わかった。食べに行こ」
仕方ないか。とキミの誘いを承諾すると
「やったあ。じゃ、早く行こ」
キミは嬉しそうに笑い、俺の腕を引っ張るのだった。
6/30/2023, 8:06:44 AM