春小豆

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確かにあの魔女はそう言っていた

期限内に想い人と結ばれなければ
海の泡となって消えていく、と。

なぜ?
わたしは紛い物の足のまま
蜜月を過ごすふたりの船の上にいるのか

未練から亡霊になってしまった…
と思っても、素性の知れないわたしを
家族のように優しく迎えてくれた
あの方は、今も優しくわたしに微笑む

数秒の差ですれちがったその娘に
向けられる甘い甘い微笑を見る度

こんなことならいっそう
泡になりたいと願ってしまう

泡になりたい

8/5/2025, 4:18:33 PM