『ただ君だけ』
私は生まれつき目が見えなかった。
そのせいで白杖をついて歩いていると、同級生から馬鹿にされることがあった。
私はその度に静かに何度も涙を流していた。
家族には心配をかけてはいけないとどんなことがあっても言わないことにしていた。
だから、誰が見ても私が隠れて泣いているということは気づかれていないと思っていた。
でも、ただ一人、こんな私の変化にも気づいている人がいたのだ。
それは私がよく気にかけていた近所に住んでいる耳の聞こえない少年だった。
私はお母さんに仲良くしてあげてほしいと紹介されて初めて男の子であり、耳が聞こえないことを知った。
ある日、点字で書いた紙をその子がくれた。そこに書かれていたことに私は驚いた。
“ 余計なお世話だったらごめんね。辛くない?我慢してない?もし困っていることがあるなら力になるよ”
その内容を点字で読んで私は久しぶりに大声をあげて泣いた。
その子はただ静かに優しく背中をさすってくれた。
私は、その子に口を開けてゆっくりと“ あ、り、が、と、う”と言った。
その子の表情は見えなかったけど優しく手を握ってくれたから喜んでいるのだと感じた。
あぁ、誰にも言えなかったことを、私が苦しんでいることをこの子は感じてくれていた。
ただ君だけが私を救ってくれたのだ。
5/12/2025, 1:22:34 PM