モンテカナゴ語で「愛と平和」と書かれたTシャツを着た社長が、僕の派遣契約の更新をするつもりはない、と言った。
「うちも厳しいんでね。まあユウちゃんは他のところでもやれるっしょ」
モンテカナゴの海で一週間焼けた社長の肌は健康そのもので、首元にはネックレスをつけていた形跡がある。そこだけうっすら白いのだ。
「あの、入った時は6ヶ月の更新だって……」
まだ3ヶ月なのに。
「あーね。うちも色々状況が変わってね。じゃ、午後の仕事もよろしく」
社長はそう言って休憩室に戻って行った。僕は小さな工場の裏でひとり立ち尽くす。
サヌルール・ダ・ポンポンテ。
愛と平和。
ほんとにそんなもの、あるのかな。
社長からもらったモンテカナゴ土産のナッツバーを、僕はひとりでかじった。
やっぱりコンビニおにぎり一個じゃ、お昼は足りないや。
【お題:愛と平和】
3/11/2024, 4:07:06 AM