忘れられない、いつまでも
Eは6年前の敗北に囚われ続ける。
自分より賢いものはいない。
臆病者のEは傲慢にも、世界を見下していた。
馴染めないのは、周囲の知能が低すぎるから。
孤独であることに無理矢理理由をつけた。
屈折した仮説の証明のため、探偵として難事件をいくつも解決した。
自分より優れた者は現れなかった。
それは、己の価値の証明だった。
そうすることでしか、社会と関われないと信じていた。
名探偵と呼ばれだした頃、異国の地で本物にぶち当たる。
一瞬で鮮やかに事件を解決した彼は、仲間に囲まれて笑っていた。
完全なる敗北だった。
光の中で自分にはない物を腕いっぱいに持って、当たり前に笑う彼。
何もない自分の唯一の拠り所であった頭脳でさえ、遥かに優れていた。
Eの歪んだ仮説は音を立てて崩れた。
自分を保つための鎧は無くなった。
取り戻すためには、彼に勝利するしか道はない。
そうでなくては、永遠にこの孤独に苦しめられるのだ。
思いは年を重ねるごとに増していく。
彼に取っては取るに足らない勝負だったろう。
自分のことなど、憶えてすらいないに違いない。
それでもEは片時も忘れることができない。
確実に彼に勝利する方法を考え続ける。
夜は更けていく。
今晩も目の下の隈は深まる一方だ。
5/10/2026, 4:21:07 AM