『心の中の風景は』
心象風景、とでもいうのだろうか。
子供の頃からずっと、目を瞑ると浮かぶ景色がある。
静かな木立の少し開けた場所にある、小さな山小屋。
外側には薪が積み上げられ、傍らには古い切り株に斧が立てかけてある。
中に入ると意外にも清潔で、全開にされた窓からは爽やかな風が吹き込んでいる。
誰もいない。私ひとり。
いや、そもそも風景だけが見えているので、私がそこに存在しているとも言えないか。
長いこと、そこには何の変化もなかった。
ところが、少し前からその景色の中に黒い影が見え隠れするようになった。
はじめは家の外の地面に。
次は家の壁に。
その次は家の扉に。
やがて、家の中にその影は入ってきた。
この影はいったい何なのだろう。
私の心の何かなのだろうか。
それとも外から入り込んだ何かなのか。
今では家の中の中央に、小さく開いた穴のように存在している。
床にではない。空間に、である。
家の真ん中の、ちょうど私の目の高さ。
ソレを覗いたら何が見えるのだろう。
ソレに指を差し入れたらどうなるのだろう。
私の心の、更に深いところの景色が見えるのだろうか。
8/30/2025, 8:45:48 AM