「今日は学校休み?」
「休ませて」
「わかった。じゃあ私仕事行くね?」
「いってらっしゃい」
弱々しい声で仕事に送られる。
「今日は頑張ってはやく帰ってくるから、待っててね?」
彼女は悲しい目で頷いた。
私には妹みたいな、守りたい存在がいる。
親と縁を切って、一人で家出した高校生らしい少女を路地裏で見かけた。その子から事情を聞き、私の家に迎えた。
私は仕事で忙しいので彼女とはコミュニケーションがあまり取れていない。自己満足な気がするが、代わりに毎日彼女をぎゅっとして、一緒に一人用のふとんで寝ている。普段は弱々しい彼女だが、寝る時は私を強く抱きしめてくれる。猫がゴロゴロ言うように、彼女は低い声で嬉しそうに唸りながら抱きついてくれるのが可愛くてたまらない。
数ヶ月が経ち、以前より彼女はよく話すようになった。私のことをお姉ちゃんとも呼ぶようになった。
よく話すよくになって気づいたが、彼女は結構低音ボイスだった。低音ボイスで甘えてくるギャップが、私をより幸せにした。
「お姉ちゃん、今日も仕事長くなる?」
「そうなの。ごめんね」
「大丈夫だよ。ごはん作っておくからね?」
「うん、いってきます」
「いってらっしゃい」
元気に笑顔で仕事に送られた。
「ただい…うわ!」
ドアを開けた瞬間抱きつかれた。
顎を私の肩にのせ、耳元で彼女は喋った。
「あったかいごはんできてるよ。早く食べよ?」
低音で囁かれたその言葉に、私の体の疲れがぶっ飛んだ。いつもは10分かかる支度を3分でして、リビングに行った。
「毎日残業して疲れるよね?」
食事中に彼女が急に聞いてきた。
「すっごい疲れるよ。でも残業した分の給料はちゃんと出るから頑張れるかな」
少しの沈黙が続いた後、モゴモゴしながら彼女が言った。
「あ、あの…さ、」
「何?」
「残業って、お姉ちゃん以外の人もしてるの?」
「そうだね、まあまあいるよ」
「残業の時って、お姉ちゃんは一人で仕事してるの?」
「たまに複数人でやるけど、だいたい一人だよ。それがどうかした?」
「え…っと、その、…」
「ど、どうしたの?」
「お、男の人と一緒に残業してたりするの?」
急に大きな声で喋ったのでびっくりした。
「ど、どうしたの?急に、男の人とはそんなに残業の仕事してないけど、何が気になるの?」
「いや、その、ただ、お姉ちゃんが、男の人とかとすごく親しい関係だったらって思うと、なんとなく、不安になるから」
「え?」
すごいびっくりした。それっていわゆるヤキモチ?じゃないか。てことは、もしかして、私のこと好き?なの?
「や、やっぱり変かな?ごめんね、忘れて欲しいな…」
恥ずかしそうに、早口で彼女は喋った。
「変じゃないよ、大丈夫。私って、そのくらいには、あなたの大事な存在になってたんだね」
「それくらいじゃないよ。すごく大事で、私の大好きなひ…と…」
その瞬間、彼女の顔が真っ赤になって、持っていた箸を床に落としてしまった。
口を押さえ、目を伏せた。
「早くごはん食べて、お風呂入って、一緒に寝よ?」
「は、はい…」
今日はいつも以上にぎゅーーーーーーーってした。
「私も大好きだよ?安心して?」
「えっと、その、私の好きっていうのはそうじゃなくて、もっと特別な好きで…」
「私もちゃんと特別な好きだよ?今まで、あなたが私のことどう思ってるかわからなかったから色々我慢してたけどね、私ね、実はあなたのこと一目惚れみたいな感じで家に迎えたの。いつか好きって告白したかったけど、怖かったの。でも、あなたも私のこと好きになってくれたなんて、すっごく嬉しいよ」
彼女は常に私の胸に顔を埋めて、見えなくても分かるほど顔が赤かった。
しばらくぎゅーしてると、彼女が口を開いた。
「ちゅー…したい」
「聞こえないな〜、何て言ったの?」
わざとわからないふりをした。
「ちゅ、ちゅーしてみても…いい…ですか?」
「してほしいな」
キスする寸前のところで彼女は顔を止めた。
目をそらしながら、ぶっきらぼうに言った。
「私が…結婚できる歳になるまで…待っててくださいね?」
明日は有給取ろうと思った
ちなみに言うと私は百合が大好物です。
そして、どうだ!平和で甘々なこのお話は!
2/13/2024, 10:50:50 PM