Prr。Prr。
昔ながらの黒電話が着信音と共に机を揺らして、職員に伝える。
職員は慣れた様子で受話器を手に取り、受話器の向こう側の人間を想像して笑顔で応対を始めた。
「はい、こちら”ま〜だホテル“予約受け付けセンターです。宿泊のご予約ですか。」
「はい、場所は日本海の孤島の洋館を十名様で貸し切りですね。」
「はい、ええ。確かにその日時だと、次の日から三日三晩は天候が荒れますね。えっ、どれぐらい。そうですね……、海上保安庁でもヘリは出せないくらいですね。」
職員は目の前の開かれたパソコンから、予約日時等を入力しつつ天気予報を確認した。
「はい、はい。以上でご予約は完了です。あっ補足事項として、当ホテルではアメニティグッズとして穴あけドリルに万能ノコギリ弛まない長いロープの入った工具箱と縫合用の針に注射器が入った本格治療キットが洋館内に設置しているので、ご自由にお使いください。」
「えっ、至れり尽くせりで凄いです?。お褒め頂きありがとうございます。当ホテルでは予約者様達が気がねなく過ごして頂けるように、日々研究と改善をモットーとしております。」
「はい。では、またのご利用お待ちしております。」
職員は受話器を黒電話へ戻した。そして、祈るのだ。
どうか、探偵がいませんように。と。
《この場所で》
2/12/2024, 5:13:00 AM