テーマ『平穏な日常』
退屈で死ぬ人種がいる。僕もその一人だ。
周囲のには真面目だとか、優等生だとか言われてる。
けれど本心は、毎日吐きそうなくらいに憂鬱で
いっそ消えてしまいたいくらいの虚無感でいっぱいだった。
10の並んだ通知表さえ持っていけば、親は僕の行動に口を出さない。
さっさと課題を終わらせ、僕は自分の部屋にある大型モニターの前に座る。
今日は何をしようか。この前出た新作映画を見る?
それともFPSでバトルロワイヤル? ゲーム実況をするのもいいな。
モニターの向こう側は楽しい。
生徒というレッテルも無ければ、成績というものさしもない。
誰かの人生を覗いたり、共通の趣味で繋がれる誰かと出会える。
本当は、リアルでもありのままの僕を見てほしい。
けど、そんなことしたらきっと、周囲の大人たちはこう言うんだ
『期待外れだった』って。
真面目な子供は、真面目の範囲から出ると残念がられる
意味が分からない。
子供にも多面性があるということを、大人は忘れていないだろうか。
子供の頃の記憶をゴミ箱に捨てた奴らは、きっと頭の容量が足りないんだ。
僕だったら絶対に、自分が子供の頃に悲しかったことを、他の子供達にはやらないのに。
「……今日は、あの映画を見よう」
一人つぶやきながら、リモコンを操作して映画タイトルの画面を開く。
親に黙ってクレカで登録した、映画のサブスクリプションサービス。
僕なりの、ちょっとした復讐だった。
日常が壊れ、ピンチに陥る主人公を自分に重ねる。
今のこの時間だけ、僕は僕以外の誰かになれた。
他者の人生で食いつなぎながら、今日も退屈という死神から逃げおおせる。
これが僕の、平穏な日常。
3/11/2023, 12:45:18 PM