雪原のその先へ進みたかった。長い冬を越えたその先に、春があるから。
手を伸ばした。けれど、届かない。
いつの間にか降り出した雪が、激しく吹き荒れた。濃い白が視界を覆っていく。前が見えない。
もう、先に進む力は残っていない。
仲間がいた。
今もなお別の場所で、使命を果たす為に戦っている仲間が。
自分がいなくなっても、世界は回る。あいつらが、世界を回してくれる。
……眠くなってきた。
このまま、終わっていくのだろう。……。
…………。
厚い雲の隙間から、薄い光が差した。徐々に吹雪が止んでいく。
雲もいつしか去っていき、太陽が辺りを温かく照らし出した。
目を開けると、どこまでも澄んだ青空が、視界いっぱいに広がっていた。
「…………春?」
春がやって来たんだと、そう感じた。
きっと使命は果たされた。凍えることはもうない。
雪原の先へ、仲間の元へと、再び歩き出す。
早く会いたいと、心から願っていた。
『雪原の先へ』
12/9/2025, 8:12:22 AM