「愛情1本、愛情サイズ、愛は食卓にある、今日を愛する。……愛情と愛の違いって何だろな?」
アイ ラブ マニー、その神引きがアイラビュー。某所在住物書きは「愛」に関するキャッチコピーを検索しながら、もしゃもしゃ、むしゃむしゃ。
サンドイッチなど食い、コーヒーをすすっている。
「書く習慣」のアプリに恋愛のお題は多い。今年の3月からのカウントで、「愛」の字を明確に含むお題だけでも、これで5回目である。
「『恋』も含めればもっと増える」
で、俺が去年の10月31日に投稿したハナシに出した低糖質キューブチョコのモデル、来月値上げだって?――物書きは呟き、ため息をひとつ。
愛情とは何だろう。味は?価格は?
――――――
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、最近、お父さん狐の隠し部屋にある黒い穴から、「ここ」ではないどこかの職場に忍び込むのがトレンド。
そこは非常に、厨二設定はなはだしい職場です。
「世界線管理局」といって、あっちの世界からこっちの世界への渡航の申請を受理したり、
そっちの世界が別の世界に悪さをするのを監視したり、もしくは止めさせたり、
あるいは、滅びそうな世界を保全したり、
既に滅んだ世界の欠片が、どこかの世界に流れ着いて、良くない影響を及ぼす前に回収したり。
要するに、とってもフィクションでファンタジーなことを、ガチで仕事にしている職場なのです。
で、そのフィクションファンタジーな職場の受付職員、癒やしにバチクソ飢えてるらしく、
子狐が来ると、やれジャーキー、それモフモフと、完全にお祭り状態。子狐それが楽しいのです。
なお、偉い法務部さんにバレると叱られます。
コンコン子狐、ジャーキースニーキングなのです。
さて。そんなこんなの子狐です。
今回のお題が「愛情」ということもありまして、
愛情たっぷりな高級ジャーキー、あるいは愛情どっぷりな頭ナデナデ、おなかスリスリが欲しくて、
その日もその日とて、お父さん狐の秘密の部屋から、世界線管理局に堂々潜入、
できたのは、まぁまぁ、良かったとして、
どうやら子狐が忍び込んだのがバレたらしく、もう既に、子狐の知らない法務部職員がスタンバイ。子狐を追い返すべく、目を光らせています。
「きょうは、ほかのところをタンケンしよう!」
みすみす、おとなしく捕獲されて、黙って強制送還されてやる子狐ではないのです。
受付の窓口を抜けて、子狐の背丈が小ちゃいのを良いことに、するり、するり、コンコンこやん。
稲荷の狐の不思議なチカラも上手に使います。
そしてコンコン子狐は、「経理部」と書かれた、陽光よく当たるポカポカブースに、やって来ました。
ところでこのフィクションファンタジーな管理局、ビジネスネーム制を採用しておりまして、
経理の職員は全員、猫に関係した名前で統一されているんだとか。にゃーにゃー。
「なんか、みんな、ごーいんぐまいうぇい」
コンコン子狐、経理の職員を見て、気付きました。
経理部の職員は、みんな、自分の思い思いの場所で仕事をして、自分の思い思いのタイミングで休憩しているようなのでした。
ほら、目の前に、大きめのコタツがあります。
そこには、ぐーぐー爆睡しているコタツムリなお姉さんと、ちまちま編み物をしている優しそうなおばあちゃんがいます。
「あら。かわいい子狐ちゃん」
優しそうなおばあちゃんは、「ノラ」、「野良」と名乗りました。そして愛情に満ちた笑顔を子狐に向けて、子狐を腕の中に迎え入れました。
「あなたのことは、知っているわ。最近しょっちゅう、管理局に忍び込んで、法務部を困らせている、『稲荷神社の末っ子子狐』ちゃんでしょう。
悪い子ね。あなたのおばあちゃんに、そっくり」
子狐を抱き寄せるノラばあちゃんは、とっても温かくて、とってもいい匂い。子狐はすぐ、ノラばあちゃんを好きになりました。
「おばーばのこと、しってるの?」
「よーく知ってるわ。昔一緒に働いていたのよ。そして若い頃、一緒にね、やんちゃしてたの」
「ヤンチャ?」
「そう。やんちゃ」
さぁさぁ、今日はどこの部署にもイタズラしないで、おばあちゃんのところでおネンネなさい。
ノラばあちゃん、子狐をモフモフとフカフカで包んで、ゆっくりゆっくり、背中をなでます。
それは正しく愛情で、それは正しく優しさでした。
愛情と優しさに包まれて、こっくり、こっくり。
コンコン子狐はものの数秒で寝落ち寸前。
その日はなんにも迷惑かけず、どこからも叱られず、幸福にお昼寝して過ごしましたとさ。
11/28/2024, 3:00:13 AM