雨音

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特別大きな荷物を肩に掛け、次々に教室を出て行く生徒。話題はエコーのかかるように「夏休み」のワードで持ちきりだった。黒板を消しながら、思った。…正直、楽しいものなのかよく解らない。ただ休みがだらだらと続くだけなのに。って、思ったのをしまい込み、友達には
「やったね~!はぁ、どこいこっかな♪」
とか、言っておいた。「面倒くさい」って言ったらまたうるさくなるし。
ひとり、また一人と教室が空いていき、背後に人の気配がなくなったとき、自分は黒板消しを二つ持ち、窓へ向かった。

みんみんうるさい。暑い。夏なんか大嫌い。
──そう思っていたら、ばっと陽が黒板消しに跳ね返った。びっくりしていると、辺りが薄暗くなったのでなんとなく上を見てみた。

不思議と眩しくない。ふわっと浮かぶ雲はゆったりと向こうの大きな山に流れていく。太陽のいっぱいの光は、雲に遮られてまでもこちらをちらちらと覗いている。

それから、急いで学校を飛び出した。無性に走りたくなった。風を切り裂き、汗をとばす。やがて公園の芝生に飛び込み、天に顔を裏返した。

一瞬みえた眩しい光は雲に隠され、また現れ、まるで映画を見ているかのような動きだった。

なつ。
その日から、休みにちょっぴり、陽が差した。


5/4/2023, 11:26:41 AM