『次は君が愛をあげる番だよ。』
中学生くらいに見える女の子が目の前で杖を振り回している。
白い筐体の上に乗り、あちこちのものを飛び移り、ときに魔法の言葉を口にした。
『幸せになりたいんじゃなくて、幸せにするんだよ。』
僕はなんでこんなところにいるんだったか、よくわからない。何か相談ごとをこの子にしたんだろうか。
『ねえ、聞いてるの?』
女の子はいつのまにか目の前に来ていて、僕の顔をまじまじと見ている。
色とりどりの布をつぎはぎして作った服、先のとんがった緑の靴……。
次の瞬間、目の前が弾けた。どうやら杖を頭に食らったようだ。
『そもそも君が幸せじゃなくちゃいけないの。』
また杖を振り回して、僕に向ける。
『そして、君の中で余った幸せを人にあげるものなの。愛するってそういうことでしょ?』
僕は夢から覚めたように、とうとう口を開いた。
「きみにはかなわないよ。愛してる。」
そして妻の名前を呼んだ。
1/30/2024, 10:18:12 AM