崩壊するまで設定足し算

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▶68.「追い風」
67.「君と一緒に」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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それは、‪✕‬‪✕‬‪✕‬が、自身の頭の上に乗っていたナナホシに、
風が強くなってきたから下りろと声をかけようとした、
その時に起こった。

「アッ」

追い風が襲いかかり、ナナホシを攫っていく。
人形もできる限り手を伸ばしたが、あと少し届かずに遠のいていく。

山も低くまばらになり、そろそろサボウム国の国境付近に差し掛かろうかという頃であった。山の間を吹き抜ける風が、強く吹いたのであった。

「アァーレェー」
ナナホシの悲鳴のような声も間延びして聞こえる。
「羽を広げて風に乗るんだ!ナナホシ!」

ウワーン…

と、肯定のような泣き言のような声が聞こえたのを最後に、
人形は、ナナホシを見失った。

「どこまで飛ばされたか。それが問題だが、ナナホシは自律思考型メカだ。当然こういった主人と…私は主人ではないが、はぐれる事態も想定されているはずだ。つまり私は闇雲に探すよりも、そのまま歩いていけばいい」

繰り返し名を呼びながら、人形は歩いていく。

しばらくして、自身の動力の残量が普段より少ないことに気づいた。

(なぜだ?)

疑問に思い、一度立ち止まろうとした所で原因に気がついた。

(早く歩き過ぎたのだ、落ち着かなくては…落ち着く?私は焦っているのか?)

今は自問自答している場合ではない、と普段通りの歩くスピードに戻し、
再び、ナナホシの名を呼ぶ。

そんなことを数度繰り返したところで、小さい声が聞こえてきた。

「助ケテー、✕‬‪✕‬‪✕‬、助ケテー」
「ナナホシ!」

人形が急いで声の方へ駆け寄れば、そこには茂みになっている低木があった。
掻き分けると、枝に挟まって動けずに足をバタバタさせているナナホシを見つけた。片手で枝を広げながら、もう片方の手で転げたナナホシを受け止める。

「見つかって良かった」
「スゴク、飛ンダヨ…‪✕‬‪✕‬‪✕‬、来ルノ早カッタネ」
「心配した、のかもしれない」
「僕ヲ?…ソッカ、アリガトウ」
「ああ。では行くか」

‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、ナナホシを手に乗せたまま歩き出した。
ナナホシも、何も言わなかった。

1/8/2025, 5:49:33 AM