【恋物語】
「ねえ、最近ちょっと避けてる?」
不意にそう言われて、私は息を止める。
「そ……そんなことないよ?」
「本当にそう? 最近、私のことをちゃんと見てくれてない気がするな〜」
なんとか蚊の鳴くような声を絞り出すも、彼女の言うとおり、私は訝しむ彼女の目を直視できない。
先週の帰り、足を滑らせた彼女を抱き止めてから、どうしようもなく、意識してしまう。
受け止めた彼女の重みと、両手に伝わる彼女の温かみ、鼻孔をくすぐる彼女の甘い香り。
そして、逆に私を心配して見上げたときの、彼女の瞳。
彼女とは幼馴染で、お互いの家のお風呂へ一緒に入るくらいには、気のおけない間柄だ。
それでも、あの時ほど近くで彼女を感じたことはなくて。
流れ込んだ彼女の感触は、私の五感を奪うには十分過ぎた。
以来、私の胸の奥は、彼女に支配されてしまったのだ。
5/18/2026, 1:52:15 PM