「もしも世界が終わるとしたら、最後に何がしたい?」
「大丈夫だよ、世界が終わる前にきっと僕達は寿命でこの世に居ないから」
そんな会話をしたのは、いつだったか。
今、まだ100歳の半分すら見えていない僕達の目の前で世界は終わろうとしている。
きっかけはなんだったか。
感染病だったような気がするし、災害だったような気がする。 どこかの国達の戦争だった気もするし、そんなものはなかったかもしれない。
昔見たアニメみたいな、ゲームの設定みたいな、そんな感じで世界は簡単に終わろうとしている。
地球にはいられない、と、昔見つけられた『人類が住める惑星』に旅立つロケット達が昨日旅立った。
僕達は、学力も運も足りなくて、きっと迎えは来ない。
大人達は嘘を吐かない。 誤魔化すだけだ。
「向こうの惑星で準備を整え地球にロケットを送り、残された方々も必ず──」だなんてニュースが何回か流れているけど。
きっと、その『準備』には100年近くかけられるんだろう。 ギリギリまで引き伸ばして、僕達が死んだ頃にロケットを送って、『ザンネンながら』って言うに違いない。
「ねえ」
部屋で眠る彼は返事をしない。
僕達の両親はロケットに乗らされた。 直前まで『便が分かれるだけでその日の内に出発します』って言われていたからみんなは悪くない。
問題は、第二便が出発してからロケットが足りないから向こうから送り返すとか言い出した事。
捨てられたんだ、と思うのは仕方ないよね。
「空が綺麗だよ」
空の色はなんだか少し異様で、宇宙が見えているようなマーブル模様がある。
すごく綺麗で、体には悪そう。
「せっかく2人きりなんだ、散歩でもしない?」
返事は帰ってこない。
2人きりでもない。
人口の半分は取り残されて、暴動が既に起きている。
文句を言おうにもお偉いさん達はみんなもう宇宙にいて、言う相手はいない。
でも。 それでも、僕は。
世界の終わりに、君とこうして生きていられてすごく幸せだ。
本音を言えば話したいし、目覚める君を見たいし、散歩だってしたい。
価格破壊が起きて無料でなんでも買えるようになったって言うスーパーにも行ってみたい。
外は比較的危険になったけど、君と2人ならどうにでもなる気がするから。
だから。
「ねえ、起きてよ……」
6/7/2023, 8:14:47 PM