未明

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私の日課は日記を付けることだ。

日記を付けていると言っても
今日あった、何気ない事や、くだらない話の事を
ただ綴っただけの物だ。

実は、こまめに書く日記は苦手だ
だけど、私が毎日付けるのには理由があるからだ。

昔から私は、人の事や日々あった事を
覚えるのが苦手だった。
その時は正直、とくに気にしていなかった。
だが、私が決定的な危機感を感じる様になった
出来事があった。

それは、中一の夏仲良くなったあの子の事を
忘れてしまいそうになった事である。

その子とは同じクラスで、偶然にも共通の趣味があって
いつの間にか、一緒に居ることが多くなった。

笑いあって、走り回って、とても楽しい日々を過ごした
そんな変わらない毎日が続くと思っていた。

ある日突然、あの子は学校に来なくなった。

しばらくの間、クラスメイトも先生もその子の話で持ちきりだった
もちろん、私もそうだった
もしかしたら旅行に行っているのかもしれない、とか
サボりたくなったのかも、とか
あるいは、違う所に引っ越しをするのかもしれない、と
色んな話がたえなかった。

それから少しして、臨時の学年集会が開かれた
最初は、他クラスの子がやらかした事の説教かと思ってうんざり
していたが、妙に暗い雰囲気に違和感を感じた事を覚えている。

話が進むにつれて、意外にもあの子の話がでた
やっぱり、他の学校に行ってしまうのかと考えていると
先生の口から発された言葉は、想像もしていなかった事だった。

あの子は帰宅途中に事故で死んでしまった、と
怖いぐらいにハッキリと、先生は言っていた。

信じられない、嫌、信じたくないと私は思った
誰もが皆、動揺していたり、突然の事で困惑していた。

その日は今までで1番最悪な日だった
その時、先生やクラスメイト、あの空でさえも泣いていた。

葬儀が終わり、未だにわだかまりはあるものの
だんだんと活気を取り戻してきた
しばらく経ち、普通の日常に完全に戻った時から
次第に、あの子の話もされる事は無くなった。

実は、少しの間は、あの子の私物や、机が残ったままだったが
休日にあの子の親族が荷物を持ち帰ったのか
関係する物は全て残らず、綺麗に片付けられていた
私は、悲しいと思ったと同時に寂しいと思った。

それから間もなくして、クラスメイトや先生は
あっという間にあの子の事など、忘れてしまった
それは私も例外では無かった。

私がそれに気づいたのは、中3の夏
ちょうど、アルバムを見ていた時だった
何故、忘れてしまっていたんだろう
一緒に居て、かけがえのない存在だったのに
あんなに私を愛していてくれたのに。

その時、私は恐ろしくなった
同時に大切な人の事でさえ、簡単に忘れてしまう自分に
とても腹が立った。

それから、私はあの子の事や、今までの事を忘れない様に
毎日、日記を付ける事にした
あの子があの時そこに生きていたという事実や
変わり映えしなくても、幸せな毎日の事を
覚えていてあげれるように。

前にも言ったが、私は日記を付けるのが苦手だ
だけど、これからもずっと綴り続けようと思う。

例え、今はもう居ない人だとしても、過去の思い出だったとしても
覚えてさえいれば、きっとそれは永遠に生き続けるのだから。


8/27/2023, 4:21:03 AM